PRO-WRESTLING NOAH
DEPARTURE2004 東京ドーム 観戦記


旗揚げから4年、理想のプロレスを求めて船出した箱舟は、ついに東京ドームへ辿り着いた。
そんなわけでNOAH初の東京ドーム大会。
毎年土曜に開催されている山本正之さんの7月のコンサートがなぜか今年は日曜開催。これは私に観戦に行けという天の配剤だろうということで、初の東京ドームでのプロレス観戦。

4時ごろ水道橋に到着。もうかなりの人だかり。
そういえば、4年以上も水道橋を通って通学していたのに、東京ドームで野球を観たこと無かったなー。なにやってたんだ、当時の俺。
そんなわけでドームに入るのは中学生の頃、ジャイアンツ戦を観に行った以来だ。
物販コーナーでパンフレットを買ったり、Tシャツを買おうか迷ったり(結局買わなかった)しつつ入場。

私の席は2階S席。この位置からだとさすがに選手は豆粒状態、オペラグラスを用意してきて良かった。おかげで試合中も選手の動きがはっきり見えた。もしも持ってこなかったらと思うとぞっとするなー。
デジカメも一応持ってきたのだけど、さすがに光学3倍程度のデジカメじゃ役に立たんね。

午後6時、百田対永源の永遠の黄金カードから試合開始。
第1試合から第5試合は、笑っちゃうくらいいつも通り。第1試合は別格として、第5試合の久し振りに噴火の田上がなかなか良かった。やっぱり大舞台には強いね。
私が楽しみにしていた第3試合、鼓太郎・マルビンvsモデスト・モーガンは、さすがにモデモガが強かった。つーか、でかくなり過ぎ。ジュニアじゃないぞ、どー見ても。

第5試合後、オーロラビジョンにてラッシャーさん、突然の引退発表。
ビデオの映像を見てもすごく身体悪そうだね。しっかり療養してください。
晩年のマイクの鬼の頃しか私は知らないけど、39年に渡りいくつもの団体を渡り歩いた激動のプロレス人生、お疲れ様でした。

観客は5万8千人(超満員)との発表。まあ、5万8千というのはジャイアンツ戦的水増し発表だけど、よく入ってた。4万は超えているはず。
正直、3万入れば御の字かなとも思ってたので。
そうそう、今回のドームは休憩時間が無し。試合を見逃したくなかったので、水分は一切取らず。ビール飲みたかったなー。
休憩時間が無いことが批判に挙がっていたけど、私はアリだと思う。それより、午後6時試合開始の方が問題かと。結局全試合終わったのが10時半頃だったからね。遠隔地の人は大変だったろう。改善を求む。

第6試合以降は全てタイトルマッチ。
GHCJr.タッグ選手権試合。丸藤正道・KENTAvs杉浦貴・ケンドーカシン。
調印式に欠席したり、ヘルスクラブをいじったりと、試合前から色々やっていたカシンだったけど、試合もカシンワールド全開。さすがの王者組も翻弄させられっぱなし。
パートナーの杉浦もカシンにペースを崩されていたが、場外での中年ズリフトなんて荒技も。
王者組は結局最後までペースを掴めず。丸藤がシューティングスタープレスを失敗した時はヒヤリとしたな。それでもパワーボムとの合体不知火、不知火・改を決める辺りはさすが。
いつものNOAHジュニアとは一味違う試合で楽しめたが、NOAHジュニアらしい凄さをあまり魅せられなかったのは残念。
あ、KENTAキュンの新タイツはどうかと思う。丸藤の入場コスも素敵すぎ。

GHCJr.シングル選手権試合。獣神サンダーライガーvs金丸義信。
獣神様に奪われたジュニアのベルトを奪い返すために満を持して金丸出撃。
ライガーが強さを見せた試合だった。金丸は試合中ほとんど攻められっ放し。
それでも勝ってしまうのが金丸の上手さ。粘って粘ってベルト奪回。あの受けっぷりはやっぱり凄いよなー。
耐え続けて最後には勝つ金丸らしい試合ではあったんだけど、ちょっとペースを奪われすぎだったよな。今後の防衛戦に期待しとこう。

IWGPタッグ選手権試合。高山善広・鈴木みのるvs力皇猛・森嶋猛。
新日本のタッグベルトを持つ外敵コンビにWILDIIが挑む。
はい、いつものマイルド2でした。結局王者組の余裕を奪えなかったなー。
負けてもいいからもりしーが鈴木にバックドロップドライバーを決めるシーンが見たかったのだけど、それも叶わず。
リキともりしーは向かい合った方がいいとずっと思ってたけど、そろそろ決断の時だろうね。

二人の天才が激突したセミファイナル、GHCタッグ選手権試合。三沢光晴・小川良成vs武藤敬司・太陽ケア。
武藤への大声援、それを上回るドーム一丸のミサワコール。この二人が向かい合うだけでもドームが揺れる。やっぱり武藤ってオーラがあるよねぇ。超一流はやっぱり違う。
夢の対決、というものが失われた昨今、向かい合っただけで、ロックアップしただけで大歓声が起こる二人っていうのも貴重ではある。
ただ、試合内容はある意味予想以上では無かった。戦いの激しさみたいのは無いよね。お互いの得意技を出し合ったりと、メッセージの交換をしてるみたいだったし、お祭り的ムードが大きかった。
三沢・小川が連携珍しく失敗していた。社長も珍しく入れ込んでたみたいね。
これを始まりとして、いつか二人の本気のシングル戦が観たいものだが。

そして、ドームの最後を飾るメインイベント、GHCヘビー級選手権試合、小橋建太vs秋山準。
かつてのパートナーでもあり、最高の理解者、そして最高のライバル同士でもある二人の3年半振りのシングル対決が、ドームのメインで実現。
もう入場時から会場の盛り上がりが半端じゃなかった。二人とも気合入りまくり。
己の肉体を、魂をぶつけ合う極限の戦い。お互いに一歩も引かず、えぐい打撃、危険な角度の投げ技をぶつけ合う。
出すんじゃないかと思っていた断崖技。小橋が断崖ブレンバスターを出せば、秋山はコーナー上の小橋に対して断崖エクスプロイダー。出した方も大ダメージを受ける殺人技にドームが歓声でなくざわめきで揺れる。
各種エクスプロイダーにタラバガニロックのラッシュから秋山が決めにきたスターネスダストを垂直落下ブレンバスターで返す小橋。
そこからはハーフネルソンとエクスプロイダーの応酬。どこにそんな体力が、というより、精神力が身体を動かす。
最後は豪腕ラリアットから高山を下したムーンサルト、そして切り札のバーニングハンマーで小橋が死闘を制した。

昨年の、三沢と小橋の壮絶な試合の後、秋山は二人のような試合は出来るけど自分はやらないと言っていた。しかし、ドームの試合が決まったあとは、命を賭けて、腕一本、脚一本はくれてやるつもりで、三沢・小橋の戦いを超える覚悟で戦うと宣言していた。
そして実際、秋山はあえて小橋の領域で戦った。小橋の得意とする打撃、投げ技に真っ正面から対抗し、そして粉砕された。
戦いようによっては秋山は勝てたと思う。相手の弱点を徹底的に突く秋山らしい冷徹な攻めや、締め技、関節技でのグラウンドの戦いで持っていけば充分勝機はあった。実際、タラバガニロックで小橋を失神寸前まで追い詰めたわけだし。
でもあえて秋山はそれをしなかった。NOAH初のドーム大会のメインを任された責任感、またドームという大きな器に映える投げ技を見せたかったというのもあるだろうけど、最大の理由はやっぱり、小橋健太だから。同じ状況でも、相手が三沢や高山だったらこうはならなかったと思う。
最高のライバルに対して、真正面からぶつかって乗り越えようという、それが秋山の矜持であり、覚悟であり、意地。
この試合は「最高のプロレス」とは言えない、言っちゃいけないんじゃないかと思った。昨年の三沢・小橋戦の後も同じようなことを考えたけど、それ以上にそう思った。
こんなプロレス、他の誰にも出来ないし、目指すべきでもない。小橋健太と秋山準だからこそ出来た試合。
この二人が魂をぶつけ合う手段が、たまたまプロレスだった。そんなことさえ考えた。もちろん、二人がこれほど魂をぶつけ合えるのはプロレスしかないのだが。
プロレスが総合や他の格闘技とは絶対的に違うところ、それは、試合に勝てばいいだけではなく、己の感情を、生き様を、魂を見せなければいけないことだ。
だからこそ、試合に勝っただけではファンの歓声は得られないし、例え敗れても賞賛を浴びることもある。そして、他の格闘技には無い感動を、ファンは味わうことが出来る。
ただ危険な技を出して、相手を倒せばいい訳ではない。お互いを信頼し、お互いの魂をぶつけあうからこそ、感動が生まれる。

正直、セミファイナルが終わった時点ではかなり不満を感じていた。ドームで緊張して普段通りの試合が出来てない選手も多かったし、これなら武道館の方がいい興行になったんじゃないかとも思っていた。
また、後ろの席にイチイチつまんないウンチクを語っているバカがいたり、ジュースをこぼしたヤツがいたりと、いまいち試合に集中できない環境だったというのもマイナスに作用した。
そんなモヤモヤした感情も、メインの激闘で全て吹き飛んだ。

試合後、小橋が秋山に向かって「準、おまえ、最高だよ!」と叫んだが、小橋も秋山も最高だったよ。



小橋と秋山のファンで、
NOAHのファンで、
プロレスファンで、良かった。

そのことを心から誇りに思う。



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