PRO-WRESTLING NOAH
DESTINY2005 東京ドーム大会


2005年7月18日。
伝説と化した小橋対秋山の激闘から1年。箱舟は再び東京ドームに上陸した。

今年は残念ながら東京ドームへは行けなかったので、DVDでの観戦です。

PRO-WRESTRING NOAH DESTINY2005 7.18東京ドーム大会 全試合収録版
PRO-WRESTRING NOAH DESTINY2005 7.18東京ドーム大会 全試合収録版

このDVD、全試合完全収録、2枚組とかなりリーズナブルな価格となってますが、実は大きな問題があります。
それは選手の入場曲が概ね差し替えられていること。
特にDISC1(第1試合〜第7試合)は差し替えられていない曲を探す方が大変なくらい。さすがにDISC2は大丈夫のようですが(小川の曲だけ差し替え?)。
これから購入を考える方はその辺を十分理解した上での購入をオススメします。
あ、試合前のインタビューはなかなか良いです。特に天龍のコメントが素晴らしい。



第1試合 6人タッグマッチ 30分1本
青柳政司、○SUWA、杉浦貴 VS 中嶋勝彦、百田光雄、菊地毅×
9分32秒 FFF→体固め

中嶋くんのNOAH初登場。初参戦で周りはオッサンばかりながら気後れすることなく頑張っていました。
ジャーマンの高角度っぷりは素晴らしい。以前は細くて観ていて心配になったけど、すっかりプロレスラーらしい体格になってました。
でもまあ、一番気合が入っていたのは百田さんだった。

第2試合 タッグマッチ 30分1本
森嶋猛、○モハメドヨネ VS 潮ア豪×、本田多聞
8分26秒 キン肉バスター→片エビ固め

もりしーもヨネも第2試合というのが現実。
悪い試合でも無かったが、一番目立っていたのはやっぱり豪くんだった。
最近、もりしーの存在価値って“投げられること”(森嶋の巨体を投げた。おおすげー!)になってないか?
ヨネもなあ、ドームで360度首捻りとかやらんでいいのに…。

第3試合 8人タッグマッチ 30分1本
永源遥、×泉田純、佐野巧真、田上明 VS 川畑輝鎮、井上 雅央○、越中詩郎、斎藤彰俊
11分56秒 首固め

余った選手を纏めて押し込みました、ってなカード。
越中さんいなかったらどうなっていたことか…。
田上も間違った方向に気合入れてるし。ほんとにもう。
キシンさんのアックスボンバーが炸裂したのでよしとする。
言うに事欠いて「(泉田の)石頭と(越中の)ケツ、どちらが硬いのか? プロレスファンなら誰でも疑問に思うこと」などと実況が言ってましたが、おいおい…。
永源さんの時間差ツバ攻撃も突っ込みたい。胸張り手を喰らった衝撃で出てるんじゃないの、ツバ?

第4試合 シングルマッチ 30分1本
○ムシキング・テリー VS ブラックマスク×
7分59秒  ミストクラッシュ

大会前から話題をさらっていた『ムシキング』ですが…。
子供にプロレスを伝えたいというNOAHの考えは応援したいが、いろいろ課題を残したなあ。
そもそもドームでやったことが間違いだった気がする。『ムシキング』のイベント会場かなんかでやればもっとやりようがあったと思う。
せめて試合後にテリーと博士たちのマイクがあれば全然違ったと思うんだが。
試合自体も普通。もうちょっとメリハリのある展開でも良かった。これなら正直、鼓○郎vsマ○ビンの方がいい試合になったよ。

第5試合 GHCジュニアヘビー級選手権試合 60分1本
(第9代選手権者)×金丸義信 VS (挑戦者)KENTA○
20分31秒  飛びヒザ蹴り→エビ固め

これぞノアジュニア! ってなクオリティの高い試合でした。
KENTAは膝蹴りに拘ったね。一回転して受ける金丸もさすが。
金丸がタッチアウトを出さなかったことが多少気にはなるが、それでもKENTAの戴冠に文句は付けられまい。
KENTAがどんな王者像を築いていくのか、注目したい。

どうでもいいが、勝利者インタビューの時乾杯しているのがヨネとキシンさん。かんけーないじゃん、あんたら!

第6試合 GHCタッグ選手権試合 60分1本
(第10代選手権者)○丸藤正道、鈴木みのる VS (挑戦者)橋誠×、秋山準
24分55秒  雪崩式不知火→片エビ固め

丸藤はま〜たキテレツな衣装を…。
しかし、差し替えるにしてもみのるの『風になれ』まで替えるのはあんまりだ。
橋は頑張った。頑張ったけど予想の範囲を超えるまではいかなかった。
普段も頑張るのは当たり前として、やはりトップレスラーにはここ一番で見せる引き出しが必要。今回の橋は残念ながら普段と変わらなかった。頭突き、モンゴリアン、ダイビングヘッド…。それだけじゃあやっぱりダメ。
秋山は敢えて今回は一歩引いて橋の奮起を促していたんだけど、もっと怖い秋山も見たかったところ。

第7試合 GHCヘビー級選手権試合 60分1本
(第7代選手権者)○力皇猛 VS (挑戦者)棚橋弘至×
17分11秒  無双→片エビ固め


そんなに悪い試合じゃなかったけどねー。やっぱり棚橋がしょっぱ過ぎた。
リキとの体格差は予想以上に大きかったし、ドラゴンロケット3連続失敗は痛すぎた。
やっぱりリキには相手を叩き潰すようなファイトが似合う。張り手は凶悪過ぎ。多少しょっぱくてもいいから、ハンセンやベイダーみたいなスタイルを目指せばいいんじゃないかな。

第8試合 シングルマッチ 時間無制限1本
× 小川良成 VS 天龍源一郎○
10分27秒 ラリアット→体固め

天龍さんのセコンドはなぜかDGのマグナムTOKYOと齋藤了。何しに来たん? せっかく来たんだから踊れ。
予想よりあっさり決着がついて拍子抜け。ああ〜、小川はムラがあるからなあ。秋山、田上、力皇にも勝ったことがあり、三沢、小橋、高山と互角の試合をしたことがある割に、スコーピオにコロッと負けたりするからね。
危険な角度で決まった53歳が効いていたんだろうけど、クールに見えて天龍との試合に入れ込みすぎてたのかもね。
最後に小川に肩を貸して帰る天龍さんが、色々な意味で流石だと思った。

第9試合 シングルマッチ 時間無制限1本
○小橋建太 VS 佐々木健介× 23分38秒 
剛腕ラリアット→体固め

真夏のチョップ祭りin東京ドーム!
小橋はこの試合を「宿命」と評したが、私としてはこの試合こそ運命の試合だったように思う。
それくらい、いくつもの必然と偶然が重なり合って生まれた名勝負となった。
二人がとても似通ったタイプの、熱い(暑苦しい)魂を持ったレスラーだったこと。
初対決であることに加えて、ふたりが今まで全く接点を持たなかったこと。
健介が試合前までにノーコメントを貫いたこと。
ベルトや団体の威信といった、余分な要素が入り込まなかったこと。
セミファイナルというある意味気楽な立場で、更に前の小川対天龍戦があっさり決着がついたこと。
そして、健介にとっては最高のライバルであった橋本真也が1週間前に他界していたこと。
これらの要素のどれが足りなくてもあそこまでの試合にはならなかったと思う。
いわば、橋本真也の、プロレスとプロレスファンへの最後の贈り物だったのかもしれない。

試合自体については語る必要はない。
鍛え上げられた肉体と肉体がぶつかり合う、これぞプロレスっていう試合。
プロレスって、すごいね。

第10試合 シングルマッチ 時間無制限1本
○三沢光晴 VS 川田利明×
27分04秒  エルボー・パット→片エビ固め

幾万の言葉を費やしても語れない戦いがある。
そして幾億の言葉を費やしても語らなくてはならない戦いもある。
だから、三沢と川田、ふたりの戦いを語ろう。

あまりに激しく、あまりにせつない戦い。

俺達が熱狂した四天王プロレスは、三沢対川田は5年前に終わっていた。それが現実。
二人とも齢40を越え、肉体の衰えは隠しきれない。
エルボー。キック。タイガースープレックス。デンジャラスバックドロップ。
かつてのふたりの死闘をなぞるかのような攻防。しかし、時計の針は過去へは遡らない。
垂直落下パワーボム。タイガードライバー'91。
完全な形で技が決まらない。その度に湧きあがる郷愁と哀切。あの、馬場さんが守ってくれていた聖域にはもう帰れないと感得する。

それでも変わらないものがある。
それは川田の三沢への思い。

かつての全日本プロレスの黄金カード、三沢対川田。しかし、過去一度もプロレス大賞のベストバウトを獲得したことは無い。二人が名勝負製造機と謳われていたにも関わらず。
プロレスはファンあってのこと。観客に伝えるものが無くてはプロレスではない。
しかし、三沢対川田は、観客を超えてたところで、お互いしか見えていない。

5年間、様々な舞台で、様々な戦いを経験していた川田。しかし、それでも川田は三沢光晴を欲し続けていた。
5年間、三沢のいない渇きを癒すものを求め続けていたといえるかもしれないし、三沢を越える手段を探し続けていたといえるかもしれない。

試合終盤、三沢がひたすらエルボーを打ち込む。キックを返していた川田だがやがて防戦一方になる。
しかし、川田は倒れない。ひたすら前に向かっていく。攻めているはずの三沢が後ろに下がっていく。
川田の目には三沢光晴しか映っていない。
何十発目かのエルボーでついに倒れる川田。その時でさえ前のめりに倒れる。
スリーカウント。
勝利した三沢、敗れた川田。二人がともに同じようにマットに大の字になったのはきっと偶然じゃない。

同じ先輩後輩でも、三沢と川田の関係は、三沢と小橋、あるいは小橋と秋山とは全く違う。
それはたった1年しか離れていない年齢差もあるだろうし、高校時代から同じ道を歩み続けてきたことも理由となるだろう。
たかが1年。されど1年。
決して縮まることの無い1年の差。しかし、川田はそれを越えようと走り続けてきた。
川田利明のプロレス人生は、三沢光晴の背中を追い続けることで成り立っていた。

試合後のマイクアピール。決してカッコよくない、潔くない、本人の言うとおりずるい言葉かもしれない。
それでも川田利明には三沢光晴が必要なのだ。
川田にとって三沢を追い続けることが全てだったから。
二人の再戦があるとかないとかは問題ではない。川田にとって、三沢がいつまでも追い続ける、けれど決して越えられない壁であること、そしてその越えられない壁を乗り越えようと歩き続けることが重要なのだ。

逆に、三沢にとっては川田は必要不可欠の存在ではない。
それは試合後のそっけないとも言える反応でもみてとれる。
三沢にとっては川田はやっぱりいつまで経ってもイッコ下の後輩なのだ。
だが、それでいいのだと思う。それでこそ三沢らしいし、そういう三沢だからこそ二人の関係は成り立っている。

プロレスには、喜怒哀楽すべての感情が、歩んできた人生が集約されている。
だから、プロレスは素晴らしい。



総評。
6万2千人もの観客を集め、ノアの実力・人気を知らしめた今回の東京ドーム大会。
ただ、全体を通してみれば決して手放しで褒められたものではない。
アンダーカードと3つのGHC選手権だけ見れば武道館レベル、あるいはそれ以下。三沢・小橋に頼らなくてもよいマッチメークの早期実現の必要性を改めて浮き彫りにしたともいえる。
それに比べて、ラスト3試合はどれも素晴らしかった。
試合自体はクオリティは断然小橋対健介戦がベストだろうが、小川対天龍、三沢対川田ともに味わい深い、これぞプロレスだという試合だったと思う。

ノアがプロレス界の盟主になったとか言うつもりは無い。ただノアが5年間やってきたことが多くの人に認められ、またプロレスの素晴らしさを伝えられた大会となったことは間違いないだろう。
これからもプロレスの素晴らしさ、おもしろさ、凄さを伝えていってほしいと思う。


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